Do not go gentle into that good night, Old age should burn and rave at close of day, Rage, rage against the dying of the light.
ディラン・トマス
ウェールズの詩人ディラン・トマスが病床の父に対して書いたという詩です。僕はこの詩を、その難解なストーリーと新鮮な映像体験で世界にインパクトを与えた『TENET (テネット)』の監督クリストファー・ノーランの過去作品『インターステラー』で知りました。この作品は人類の新天地を求めて宇宙開拓を目指す宇宙飛行士たちの物語であり、この一節は主人公が遠い宇宙への旅に出る際に師とも言える大学教授から贈られたことばです。それより以前に出版されている詩の邦訳では「あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない/老齢は日暮れに 燃えさかり荒れ狂うべきだ/死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ」と訳されているのですが、個人的には劇中の翻訳で使用された「穏やかな夜に身を委ねてはいけない」という言葉が気に入っています。死に向かう父に対して抗うことを諭すようでいて、自分自身に対する絶望への抵抗にも受け取れるこの詩、辛く挫けそうな時に逃げてしまいたくなりそうな自分に対して語りかけるように頭のなかに浮かべます。穏やかな夜に身を委ねてはいけない。
2021.06.14