もう、だめだ、と思ったら逃げること。そして「自分の好きな場所」を探す。
ちょっとがんばれば、そこが自分の好きな場所になりそう、というときは、骨身を惜しまず努力する。逃げることは恥ではない。
梨木香歩『不思議な羅針盤』より
梨木香歩の作品を読むと、本が付箋だらけになる。 心に留めておきたい言葉、モヤモヤを払ってくれる言葉、新しい気づきをくれる言葉。。。 この『不思議な羅針盤』は28の短編集から成る本。植物や動物、何気ない日常を丁寧に描いた作品の中には、社会問題や生き方、心の持ちように対する見解がすっと自然に落とし込まれている。タイトルに「羅針盤」とあるように、日々の生活で迷ったとき、困ったときに自分の心を支え、道筋を示してくれる言葉が詰まっている。良い表現や府に落ちる考え方に出会うと、宝物を見つけた気分になる。 今回取り上げた言葉は、自分があたまの片隅に置いているお守りのような言葉であり、ちょっぴり元気のない誰かへそっとかけてあげたい言葉である。逃げてもいい、ずっとそこにいる必要はないと少し楽に構えれば、もがいて絡まってしまった糸もきっと溶けていく。狭くなった視界もきっと広がる。 そして、自分の理想の生き方のためには努力も必要。 この言葉を簡単に「シロクマはハワイで生きる必要はない」と表現する筆者。常にあたまの中に、キャリーケースを抱えて常夏のハワイに手を振っているシロクマがいれば、今日も頑張れる。
2022.08.16